伯爵令妹の恋は憂鬱

マルティナも両親の馴れ初めなど聞けなかった。まあ、聞いても教えてもらえるような健全なものではなかったのだが。

全員で一通り探し終わったが、この部屋には遺書らしきものはなかった。


「うーん。旦那さんとの思い出だったらやっぱりあのドレスにあるはずだと思うんだよね。だからそっちじゃないんじゃない? 子供とか孫とかとの思い出だよ。フリード様、何か思い出すことないの?」

「なにかと言われてもな。父上はおばあさまに頭の上がらないところはあったが、仲がいいとはまた違った気がするんだがな。……ところでドレスとはなんだ?」

「衣裳部屋にあったんだよ。リタ様の昔のドレス。あの人思い出のドレスを全部取っておいたみたいなんだ」


言い合いながら二人が部屋を出ていこうとしたとき、ふと、マルティナの頭にひらめくものがあった。


「ぬいぐるみ……!」

「は?」


怪訝そうに眉を寄せるのはフリードだ。

だがマルティナは自らの思いつきに自信があった。あのクマのぬいぐるみは、おそらく幼いころのフリードに与えられたものだろう。それが今まで保管されてあるということは、リタにとって大切な思い出があったからではないかと思ったのだ。


「待っててください。持ってきます」

「あ、マルティナ様、俺も行きます」


説明するのももどかしく、マルティナが自分に割り与えられた部屋へと駆け出す。そのあとを、トマスが追った。

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