Perverse second
どれだけ強く抱きしめたって、どうしてもこれが夢としか思えない。



それくらい長かった片思いがこんな急に終わるなんて、考えもしていなかったのだから。



「……柴垣くん……ねぇ……」



戸惑いがちに三崎はもぞもぞと腕の中で動いているが、その感触がまた可愛らしくてたまらない。



感触を感じれば感じるほど、これが現実だと実感できて。



一生抱きしめていたいとさえ思った。



「……ちょ……柴垣くんっ」



「うるさい」



何とも言えない感情を実感してるところなんだよ。



とはいえ本当にずっと抱きしめているわけにもいかず、俺は不満満載で腕を解いた。



「信じられねぇ、この結末。今までの俺の苦悩も今日1日の葛藤も。全部津田さんの掌で転がされてたって事かよ。つーかなんなの津田さん。お釈迦様かよっ」



付き合ってると言ったのも、家に来ると言ったのも、あの挑発も全部。



津田さんのお膳立てというわけだったのか。



「それもこれも……」



全部俺が情けないせいなんだ。



だけど。



片手でついっと三崎の顎を掬い、俺はキスするくらいに近さで三崎と視線を合わせた。



「全部お前が悪くね?」



「え?」



いや、本当は全部俺が悪いんだけど。



ただ一つだけ、いつも思っていたことがあるんだ。



「お前がアノ時、ちゃんと俺を受け入れてれば……」



「アノ時……?どの時?」



「うわ、マジかよ。お前の中で本当に無かったことになってんのか」



「……あ」



やっと思い出した『アノ時』



「今ココで再現してやってもいいけど?」



「あっ……」



そう言ってもう一度唇を合わせようとした瞬間。



「やめてくれます?ここ会社なんで」



妙に冷めた声に凍りつき、俺達は慌てて距離を取った。
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