Perverse second
昂る感情が先走り過ぎて、大切なことをすっかり忘れてしまっていた。



そう、ここは会社のリラクゼーションルームの一角だということを。



この声の静止がなかったら、きっと再現してしまっていたかもしれない。



途中までだけど。



その声の主はヒール音を響かせながらこちらに近づいてくる。



「誤解のないように言っときますけど。別に聞き耳立ててたわけでも覗き見してたわけでもないですからね」



この際、盗み聞きでも覗き見でも構わないから。



立ち去ってくんないかな……竹下サン。



「あれだけ私に偉っそうに仕事のこと語ったくせに、自分はその会社で何やってんですか」



「……スミマセン……」



この三崎の表情を見るに、よっぽど偉そうなこと言ったんだろうな三崎は。



恐る恐る顔を上げる三崎と対照的に、心の底から呆れている表情の竹下が目の前に立ちはだかった。



「竹下、ごめん」



三崎とこうなって初めてわかった自分の失態。



俺は三崎を守ることに必死で、竹下の心を完全に蔑ろにしていたんだ。



歪んでいたとはいえ、好意を踏みにじったことへの謝罪。



それは竹下の視線の鋭さを少しだけ陰らせた。



「竹下の攻撃の仕方も俺の守り方も、お互い間違ってたんだ。今ならそれがわかるよな、俺達」



感情的な攻撃や、その場しのぎの防御はなにも生み出したりはしない。



「視野を広げれば、まだ軌道修正可能だったろ?」



三崎と話したことで竹下が変わったように、まだまだ状況は変化させられるんだ。
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