Perverse second
そういえば、と言いながら、楠原は重そうなカバンをデスクに下ろしてグルリと肩を回した。



「やっぱり柴垣くんって凄いよね」



「は?なにが?」



「仕事だよ。まだこっちに帰ってきて1週間ちょいでしょ。なのにもう月予算の3分の1を軽くクリアしてたじゃない」



「ああ、あれは前任者のおかげ。俺の前、新人だったろ?まだ引き出し方が上手くなかったんだよ」



新人だから、得意先の要望を上手く消化できなかっただけ。



俺が新しく展開したことで興味を持ってくれて広がったんだ。



「新人は教えられた事を忠実にこなすのが精一杯だからな。応用を教えてやれば、アイツらもちゃんと伸びると思うよ」



「それを津田さん一人がやってるから大変そうよ」



「ふうん…」



そういう事か。



津田さんくらいの営業マンなら、もっと数字が上がっているはずなのに、何があったのかずっと不思議だった。



全体のフォローも兼任していたのなら頷ける。



そして俺はその補填として呼び戻されたというわけだ。



だったら自分の仕事を期待以上にやってやる。



そしていつか…。



「津田さんといえば。飲み会の時の柴垣くんの言葉には驚いたなぁ」



「俺、何か言った?」



「言ったじゃない。結菜のこと」



確かに色々とムキになって語ってしまった。



そういえば、楠原は目を丸くしてたっけ。
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