その先へ
中学に入ったころには、オレもすっかりその生活に慣れていた。


手作りだった夕食はなくなり、その代わりにお金がテーブルの上に置いてあるようになった。


毎夜の罵声は聞こえなくなった。


ある日、部活を終え、友達と遊んでから遅くに帰宅すると、珍しく両親の靴があった。


『お帰り』

こちらを見向きもせずに口だけの『お帰り』
それでも聞いたのはいつぶりだろう。


久々に見る母親は化粧も濃くケバくなっていて、父親も若作りしたいのか茶髪になっていた。サラリーマンのくせにいいのかよ、と突っ込みたくなった。


二人の間に居たくもないし、返事もせず、部屋に行こうとすると、


『あんたもあたしをバカにしてんのか!』


母親がいきなりそう言ってバッグを投げてきた。


『っ!何すんだよ!』
『あんたの!あんたのその顔!コイツにそっくりね。外に女たくさん作って遊びまくってるこの男にそっくりだ!キモチワルイ!』


ヒステリックに叫びだした母親に呆然としていると、


『お前だって遊んでんだろ!!オレだけを悪く言うのは卑怯だ!』
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