その先へ
一人で食べ、一人で片付ける。一人でテレビを見ていても両親は帰ってこない。


何かがこの家で起きていることはわかっていた。でも何かはわからない。


明るかった我が家が停電になったかのように暗いまま。
その中でオレはひたすら両親の帰りを待っていた。


いつの間にか寝てしまっていたオレに聞こえてきたのは、両親の怒声。
お互いを罵りあう汚い言葉の応酬。


オレは耳をふさぎ布団をかぶりそれらが聞こえなくなるのを祈る。


朝になると、冷たい空気のリビング。


あれだけくっついていた両親は、口をきかなければ、目も合わせない。
オレともだ。


笑顔のない『おはよう』
笑顔のない『いってらっしゃい』


そして誰もいない家にまた帰ってくる。


そんな日々を過ごしていた。





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