その先へ
「...なるほど...」


会社近くの定食屋。昼時によく来る店で、オレは上川さんと向きあっていた。


円香との関係、結婚についての考え、両親との過去。
ここ数日、オレの頭の中をごちゃごちゃに掻き回しているものを吐き出した。


「..お前の気持ちも、わからないわけじゃないけどな」


お茶を一口飲んだ上川さんはそう前置きして、


「でも、彼女の決断は正しいと思う」


そうはっきりオレに告げた。


「だってそうだろう?お前は、過去に縛られて結婚なんかするもんじゃないって頑なに思っている。長年一緒にいてもお前の気持ちは変わらなかった。自分の気持ちを信じてもらえない相手といることは、彼女にとって何より悲しいし悔しいことだろう」


上川さんは的確に円香の気持ちを代弁してるのだろう。誰が聞いたってそう思うのは当たり前だ。


「わかってます。わかってるんですけど。今、お互いに想い合っている。それだけじゃダメなのかって、未来は誰にも、わからないし...」


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