極甘同居~クールな御曹司に独占されました~
彼の過去
空まで突き抜けるようにそびえ立つビルの自動ドアをくぐると、ダイナミズムに溢れる吹き抜けのロビーが広がっている。

緊張感を漂わせ受付へと進む来訪者と、それを華やかな笑顔で迎える受付嬢。
スーツに身を固めロビーを行き交う社員たちはみんな洗練されていて、何度来ても本社ビルのこの空気は身の引き締まる思いがする。


でも今日の私は目に入るすべてのものが煌びやかに見えて、足がすくむような気分になった。
入社して五年の間に本社ビルには何度も来ているし、同棲を始めてからの二か月だけでも二度目だ。
いったい前回と何が違うのだろう?


品川本社での今日の予定は二つある。
月に一度行われる技術主任昇格に向けての研修と、あと一つは今日だけのイレギュラーで入った、経営方針徹底会への代理出席だ。

本来なら部長か、もしくは課長が出席するはずだったのが二人とも急きょモバイルメーカーとの折衝が入り、ちょうど本社に行く予定のあった私が指名を受けた。

その経営方針徹底会は経営企画室主催で、室長である高梨さんが議長を務める。



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