極甘同居~クールな御曹司に独占されました~
もう嘘はつけない
時間にして五分。
もしかすると、もっと短いかもしれない。
クリーンルームを出た後の、私のメーク時間だ。

ここ一か月の間に随分と要領よくメークできるようになった。
高梨さんへの片思いを自覚し、それが一方通行に終わるしかない恋だとわかってからも、私は何かにしがみつくようにしてメークを続けていた。


恋の相手になれなくても、彼の記憶に少しでも綺麗に残りたい。
せめて液晶技術者として彼に尊敬される人になりたい。


これまでと業務を変わりなくこなしながら、私は仕事の合間に技術誌を読み、帰宅後も液晶技術に関する最新の研究報告を読んで勉強した。

それらは私の今の仕事に直接役立つものではなかったけれど、今の居場所で満足していてはいけないという、その思いが私を駆り立てていた。
そこには長谷川さんへの嫉妬も含まれていたと思う。


自分のエネルギーをそぎ落とすように頑張っていないと、失恋相手と毎日一つ屋根の下で暮らす生活はいつか心が暴
走してしまいそうで怖かった。



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