極甘同居~クールな御曹司に独占されました~
チェーンをかけると足音は遠のいていき、続いて表から車のエンジンをかける音が聞こえた。
カーテンの隙間からそっと覗く。
暗く細い路地を照らすテールランプは見る間に遠ざかり、曲がり角で一瞬強い光になった。


彼の車が角を曲がって見えなくなると途端に心細くなり、私はカーテンの隙間をぴったり閉じてテーブルの横に座った。
いくら苦手なタイプでも、男性がいる安心感というものは大きいらしい。
だから、もっと居て欲しかったと思ってしまうのは、単に変質者で不安になっているせいだ。


テーブルに置かれた名刺を取り上げる。


どうしよう……?

あんな突拍子もない提案なのに、即刻断らなかった自分が不思議だった。

なぜか財布から海老天サービス券を取り出して、名刺と並べてみる。


かなり長い間それらを眺めた後、私は二枚を大切に手帳のポケットに仕舞いこんだのだった。



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