極甘同居~クールな御曹司に独占されました~
「……期限は?」


「見合い話が完全に流れるまで。その時まだ変質者が逮捕されていなければ、そちらの都合で期限を延長してくれて構わない」


お金や身の安心のために操を売ってもいいのだろうか。
別に身体を求められているわけではなく、むしろ向こうもお断りだろうけれど、〝同棲〟という響きへの抵抗感と、田舎で培われた中世レベルの貞操観念が異議を申し立てる。


「無理は言わない。ゆっくり考えてくれたらいいが、早ければ有難い」


高梨さんは名刺入れから一枚取り出し、携帯番号を書きつけてテーブルに置いた。
もっと強引に畳みかけてくるのだろうと思ったのに、高梨さんは「返事はその番号に」と言っただけで腰を上げた。


見送りのため彼に続いて玄関を出ようとすると、「ここでいい」と止められた。


「しっかり戸締りしろよ」


そう言い残して彼が出て行った玄関ドアに、言われた通りに鍵をかける。
すると外側から「チェーンも」と指示が飛んできた。

色々と気づくところが腹立たしいのやら頼もしいのやら、自分でもはっきり説明できない不思議な気分になった。
男性に心配されたり守られたりしたことがないせいだ。


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