心をすくう二番目の君
「……それで、一緒に住んで漸く俺の好みが解って来たとか言って」
暫し他愛もない新生活のエピソードを引き出したところで、それとなく水を向けた。
「幸せいっぱいですねぇ。……今は、奥さん一筋なんですか?」
手の中の缶をあおってから横目でちらりと見遣ると、隣の男は目を見張っていた。
更に気を引くべく、掌を添えて耳打ちする。
「社内の女の子と、上手いことやってるんじゃないんですか?」
僅かに眉根を寄せると、注意深く窺うようにこちらを見た。
「……何のことだ?」
「僕、偶然見てしまったんですよね。花見の時……」
にっこりと微笑んでやると、途端血相を変えて噛みついた。
「お前……っ。相手が誰だか知ってるのか?」
……かかった。
いちかばちかだったが、あからさまに狼狽えており、自白したも同然の反応を示した。
待ち伏せでもして捕まえて、問い詰めるのは簡単だったが、恐らく警戒されて口を割らない。
此処はそれとなく親しみやすさを打ち出して、懐に入る方が得策だと企てた。
「いえ? 全然知りませんし、興味もありません。僕が興味あるのは、どうやって上手くやってるかです」
「…………」
「ほら、僕もそろそろ身を固めないといけないかなって。その前に遊んでおこうかなーなんて」
肩を竦めて、自らの噂話を持ち出す。
それらしい理屈を並べ連ねると、幾らか気を許したようだ。
「……そういや中薗も、結婚するらしいな」
トントンと指先を動かし、先端から灰を落として薄笑いを浮かべた。