そしてあなたと風になる
協働
翌日、まひるは櫻木コーポレーションの本社ビルを訪れていた。

愛車のバイクはウィンカーの修理と点検に出していたため、今日はマイカーでの移動である。

赤いのワンボックスタイプの軽自動車。普段から、画材のほかカメラや撮影機材などデザインに必要な資機材をのせている。

警備員の案内で、地下駐車場に車を止めた後、エレベーターで受け付けへと向かった。

「諏崎デザイン工房の諏崎と申します。櫻木専務にお取り次ぎ願いたいのですが。」

「伺っております。ただいま呼び出しておりますので少々お待ち下さい。」

受付の二人が立ち上がり、まひるにお辞儀をした。頬がほんのり染まっている。

まひるは女性にしては長身でお尻も小さく細身ため、どことなく中性的である。

ショートカットにしていた大学生時代は、男子学生に間違われてmen's雑誌のモデルに、と声をかけられたこともある。

今日も白のカッターシャツに黒のタイトパンツ、髪は一つ結びという出で立ちのため、長髪の美少年に見えなくもない。

『素敵,,,。男性にしては美し過ぎるけど』

微笑みを称えて、たたずんでいるまひるを見つめながら、二人の受付嬢はうっとりとした。

数分後、

「お待たせしました。」

と、櫻木専務が、秘書の橘と企画・営業部課長の百花を引き連れて受け付けにやってきた。

百花は、まひるを見つけると、一瞬目を見開き満面の笑みを浮かべて駆け寄った。

「まひるさん、櫻木百花です!お目にかかれて光栄です!」

「こら」

「まひるさんに失礼だろ」

コツン、と百花の頭を叩く櫻木。
クスクスと笑うまひる。
微笑む橘。

『なんなの、このオフィスドラマ的な絵面はー!』

受付嬢二人が、キュン死しそうになって見とれている中、四人は応接室に向かって歩きだした。


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