恋をしようよ
「何で結婚しないの?いくらでも相手はいるでしょう?」

俺が聞くより先に、彼女がそんな風に聞いてくるから、お前もなって笑って答えた。


「俺はもうどうでもいいや、可愛い甥っ子姪っ子がいるしな。」

「だけど、カズヤんとこ、後取りが居ないとやばいんじゃないの?親が煩くない?」


まあそれはそうなんだけど、好きな女にうちみたいな面倒な家を任せなきゃいけないと思うと気がひけるんだ。


「お前こそ、いくらでも見合いの相手もいるだろうし、女子はタイムリミットもあるだろ?いいのかよ。」



「そうだねえ・・・」


彼女は急に無口になって、ずっと何を見るわけでもなくずっと窓の外の夜景を眺めていた。







「来年結婚することになった。」


しばらくの沈黙の後、ポツリと独り言のように呟くので、ああそういうことかって思う。



「俺は既婚者とはやらないからな・・・」


何度この言葉を口にしただろうか、みんな別れる時はそうなんだ、俺はきっと丁度いい暇つぶしで、遊びでセフレで、どんなに本気になったって、相手はそうじゃないんだ。



「わかってるよ、何年付き合ってると思ってんの。」


絶対不倫はしない、そう心に誓っているから。



「でもさ、誰かのものになるってなんか嫌だな、お互い対等にカズヤみたいに付き合えるといいな・・・」


「お前なら大丈夫だよ。」

彼女は芯の強い女性だ。
仕事も恋もいつも一生懸命だった、そんな姿をずっと見ていたのだから。





数年前の、小百合が結婚したときのことを思い返していた。

『何でそんな、モノなんていうんですか?
彼女は誰かのモノなんかじゃないでしょ!?』

そうやって真剣に俺に食いついてきた、元カノの夫である櫻井を思い出す。
それからは、俺もそういう言葉を使わなくなった。



「カズヤは優しすぎるんだよね・・・誰にでもそうだから、決まった人に絞れないんでしょう?
それと、前の失恋で怖くなっちゃった?」



彼女の指が、俺の濡れた唇をそっとなぞって、潤んだ瞳で見つめ返してくれる。



「ごめんね、私じゃあなたの一番になれなかったね。」


「あやまるなよ、それよりも、今まで付き合ってくれてありがとうな。真理亜・・・」



きっとこんな中途半端な関係は今夜が最後になるんだろう、明日からはきっとただの友達だ。


俺たちはそれからどちらともなく深く唇を重ねながら、ベットの中で一緒になった。


よく手入れされた肌が、あの頃とは違うけれども、それでもあの頃と同じように気持ちはいつでも高ぶらせてくれる。







大切な女に添い遂げてやることも出来ない、
俺は何を間違えたのだろうか・・・



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