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2.雨上がり
時折、ぽつんぽつんと窓にあたる雨の粒を気にしながら、コタツに立てた鏡を覗き込む。

朝のこの時間は嫌いだ。

どんなに遅くに寝ても、必ず早めに起きて、朝食も食べずにここへ座る。

パール入りの下地を肌にのばし、安いファンデーションを塗ると、もう一人の自分が鏡に映る。

さらにライトブラウンのアイブロウで毛のない眉毛に色をつける。

いつもアイシャドーはブラウン系。今日は少し濃い色を選んだ。

リキッドのアイラインをこれでもかってほど太めに書いて、乾くのを少し待つ。

待つ間に制服に袖を通し、紺色の靴下を履く。

中学生時代、当たり前のように履いていたルーズソックスが懐かしい。

分厚いルーズソックスの方が温かいから好き。

とくにこんな雨の日は。

それに絶対ルーズソックスの方が可愛い。流行って何なんだろう。

紺色の靴下が今の私。

コタツの上の腕時計を腕につけようとしてやめた。今日は学生鞄の奥の方へ。

そこからは慌ただしく、乾いた瞼を確認して、落ちにくいと評判のマスカラをたっぷりつけて、もう一人の自分の出来上がり。


今日が始まる。


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