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上靴のまま校舎を飛び出すと、その後ろ姿は校門の前でくるりとこちらを向いて校舎を見上げていた。

「――綾菜!」

私は久しぶりに出た大きな自分の声に少しビックリしつつ、綾菜に駆け寄った。

「え、うそー!涼子!」

私の声に視線を下ろした綾菜もビックリした様子だった。

大きな声を出したこともそうだけど、久しぶりに走ったからか、息苦しく、飲み込む唾なんかでは喉が潤わない。

こんなに必死に走って額に汗まで吹き出してきたというのに、綾菜はというと涼しい顔。

しかもどこか清々しいさっき見た空みたいな表情をしているものだから、無意識に笑いが込み上げてきてしまい、苦しいはずなのに声を出してまで笑ってしまう。

「何?何がおかしいの?」

「あははは!ごめん、何だか自分が可笑しくて 」

「何それ」そう言って綾菜もつられて笑っていた。

一通り笑い終え、息も落ち着きはじめた頃。

「さっき学校、辞めてきた」

綾菜が凛としながらまた校舎を見上げ言った。

思わず一緒に見上げた校舎は青い空にくっきり浮かび上がっているようだった。
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