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ビニールとビニールがくっついた傘は開きにくい。

昔、お気に入りだったレースのついた傘を持っていって友達に『おばちゃんクサイ』と言われてからはずっとビニールの傘。

小さい傘は時々肩が濡れてしまう。

『あの場所』へ続く細い道を右手に見ながら、心の中で『いってきます』と呟き、早歩きで駅に向かう。

いつもの時間のいつもの車両に乗り込むと、長い長い一日の始まり。

10分後には奈津美に『おはよう』。さらに5分後には綾菜に『おはよう』。

こうして今日も三人並んで歩くんだ。


「今日1限目何だっけ?」

長ったらしい坂を雨に濡れながら歩いていると、湿気にも負けずに、今日も綺麗に髪を巻いた奈津美が言った。

「体育でしょ?」

綾菜が素っ気なく返すと、奈津美は『ダルイ』を連呼する。

奈津美に限らず、私たちなんていつも『ダルイ』を連呼する生き物だ。

私は体育でよかったと言葉に出さずに思う。

濡れた制服をこのまま着ているのは嫌だ。


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