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俊也は夢ばかりみていないけど、現実も見ません。ってな感じで、足の上にのっていた小型のゲーム機を、何やら操作していた。

その指はすぐに止まり、ゲーム機を鞄にスポッと音がするように投げ入れた。

わかんない奴。私も同じだけど。

「男はいいよね」

顔を動かさずに目だけで俊也を追っていた私は、呟くように、でも最後の『ね』だけ強調して言った。

すると、目の前の獲物を捕られた動物のような目つきと「あん?」なんて言葉で返される。

太陽が移動するにつれて、風が吹き始めていた。

「男もそんなによくねぇよ」

揺れる前髪の隙間から見える俊也の姿は、『そんなによくねぇ』かもしれないけれど、それでも憧れる『男』の姿だった。

それこそ、スカートがめくれてしまうんではないかと思うほど、風はどんどん強くなる。

雲が一気に吹き飛ばされるようになくなった。

明日もきっと晴れるに違いない。

少し落ちてきてはいるが、それでもまだ上の位置にある太陽を写す私の目は、やっぱり憂鬱な雨雲のように、どこかどんより瞼が重たかった。

今日の風は明日も止む事なく、今日の風が明日もより強くなって吹く。

同じ風の中で、私は明日も生きていくんだ。


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