地獄的恐怖鬼ごっこ
「トイレ……」

はたしてそこが隠れる場所として最善なところなのかどうかは分からないが、今はどこかしらにいかなくてはならない。

私達は廊下を曲がってすぐにあるトイレに行くことにした。一瞬で隠れられれば、バレないで撒けるかも。

パタン。

出来るだけ小さな音で、と思ったが、少しだけ大きくなってしまった。

「っく……う……っ」

みずきは顔を膝に埋めて声を押し殺して啜り泣いている。

私はみずきには何も言わないでいようと思った。

私も手を見たり天井を眺めていたりと、暇を潰していた。

「あやか、聞いてもいい?」

みずきに突然喋りかけられて、少しだけ驚いたが、見ると、膝から左目だけを出して、私の事を見つめていた。

「どうして助けてくれたの? ウザいとか思ってたでしょ? 殺したい気分にもなったでしょ?」

更にみずきは続ける。

「あれだけ酷い言葉を浴びせたのに、どうして……」

私は少しだけ考えた。

理由がないのだ。

脳で考える前に、勝手に体が動いていた。

危険だっていうことを理解する前に。

その旨をみずきに言うと、みずきはしばらく考えるようにドアを見つめていた。


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