外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
『七瀬の『茶道』が兄貴で染め上げられることになる』


あの日、奏介が口にした一言が、私の心で燻っていて、底の方に重い鉛のように溜まっている。
一夜明けた朝、奏介はちょっと照れ臭そうに、『悪かった。気にしないでくれ』と言ってくれた。


『次の大寄せ……俺が出席できれば、いくらかフォローしてやれたが、残念ながらそれは叶わないかもしれない。だから、七瀬。頑張ってくれ。応援してるから』


そう言われて初めて、奏介の上告審も周防家の次のお茶会も今月下旬、同時期だということを思い出した。
奏介が、出席できない。
奏介が隣にいない、私一人でお手伝いに出ることに、不安が過ぎった。


彼から上告の話を聞いた時から、その可能性を考えるべきだった。
なのに私は、奏介はそばにいてくれるものと信じて、これっぽっちも疑わずにいた。
無自覚のまま、甘え切っていたとしか言いようがない。


奏介のフォローは、期待できない。
ならば、私はもっと頑張らないと……。


気負ったつもりはない。
でも、テーブルの上のパンフレットを捲っていた指が、ぴたりと止まる。
考えてみれば、さっきからずっと目で追っていたはずなのに、思考はまったく別の方向に逸れていた。
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