外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
「と、藤悟さん」

「花もいいけど、せっかく既婚女性だし、少し雅で色っぽい感じなのがいいかな」

「あのっ! 藤悟さん!」


私は畳に両手をつき、わずかに腰を浮かせて、着物選びに夢中の藤悟さんを遮った。
それにはようやく彼も手を止め、私を上目遣いで見遣ってくる。


「なに?」

「なに?じゃなくて。着付けは誰にお願いしたら……」

「もちろん、俺がやってあげるよ?」

「へっ」


ごく当たり前の質問をした私に、藤悟さんは不思議そうな顔で首を傾げた。
一瞬言葉に詰まった私に、彼は『なにが不満だ』とばかりに胸を反らす。


「弟子に任せるんじゃ、時間の無駄だからね。それに、間違いなく俺の方が手際がいい」

「そっ……」


それはそうかもしれないけれど!
思い返してみれば、私はこの間のお茶会でも、はっきりと藤悟さんのお申し出を断ったはず。
それをすっかり忘れているのか、藤悟さんは再び着物を手に取った。


「理解したかな。さあ、どれがいい? 俺のお薦めは、七瀬さんには……」


藤悟さんは顎に手を遣り、まるで値踏みするかのように、細めた目で私をジッと見つめる。


「あのっ……!」


私が『それはちょっと!』と声を張った、その時。
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