外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
手放しの称賛だなんて、いい気になっていた私の鼻を鮮やかにへし折ってくれる、痛烈なお言葉……。
でも、仰ることはいちいちその通りだから、私はぐうの音も出ない。


「ほらね。胸張れずに猫背になっちゃうだろ? ってことで、今日からは着物を着て稽古しよう。じゃ、早速着物の着付けしようか」

「はい……」


しょんぼりと肩を落とす私に、さらにずけずけと追い打ちをかけ、藤悟さんはその場にスクッと立ち上がった。
早速誰かお弟子さんを呼んで、私の着付けをお願いしてくれるのかと思った。
なのに、数点の着物を持って来てくれたお弟子さんを、彼は『ご苦労様』とお茶室から見送ってしまう。


「え? あれ……」


襖を閉めて出ていくお弟子さんを目で追い、困惑する私に構わず、藤悟さんは畳の上で包みを開き始めた。


「どれがいいか。稽古着と言っても、せっかくだから七瀬さんに似合う綺麗な柄にしよう」

「えっ。あの、それは嬉しいですけど……」


開いた包みの前に、美しい所作で裾を押さえて正座をする藤悟さんを追って、私も彼の向かいにペタンと座った。
彼は私が言葉を挟むのも無視して、「牡丹、撫子、鼓、扇面……」と、なにやら着物の絵柄の名前らしき言葉を口ずさんでいる。
< 166 / 226 >

この作品をシェア

pagetop