外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
今日はその控訴審で、判決が予定されている。
原告代理人である弁護士の口頭弁論が終わり、裁判官が一時休廷を宣言して退廷した。
裁判官が再び法廷に戻ってきたら、判決が出るはずだ。


休廷の間、周りからはひそひそと小さな声も聞こえてくる。
それにつられて、私はそっと辺りを見回した。


この裁判では、傍聴席は抽選ではなかったけれど、三十ほどの席に空きはない。
判決を待つ傍聴人は、大きく二つのグループに分けられる。
どこか厳しい表情をしたスーツ姿の男性たちは、原告企業の関係者だろう。
それ以外は、いかにも学生っぽい数人の若者グループ。
大学の法学部の学生が、講義やゼミの一環で来ている、そんな様子だ。


そして私は、原告・被告、どちらの企業の社員でもない。
この裁判にはまったく無関係の企業に勤務する、ごく普通のOLだ。


場所が場所だけに、いつものオフィスカジュアルよりもしっかりめの、サックスブルーのワンピースを身に着けている。
どんぐりみたいな丸い目のせいで童顔と言われるけれど、法廷に入る前にしっかりメイクを直したから、学生にも見えないはず。
少し明るい栗色にカラーリングしている髪は、肩にかかる長さのミディアムボブ。
オフィス街ならそう目立つルックスではない。


でも、初めての裁判傍聴に緊張して顔を強張らせ、一人ぽつんと座っている私は、明らかに他の傍聴人からは浮いている。
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