外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
「……執務室に一人って。誰にも聞かれない?」

『ん? ああ。個室になっているから。日中はパラリーガルの出入りもあるが、この時間になれば……』

「それじゃあ、帰って来れない夜は、毎晩電話で『七瀬、愛してる』って言って」

『……え?』


泣きそうな声にならないように、必死に明るくおどけて言った私に虚を衝かれたのか、奏介は一拍遅れて聞き返してきた。


「言って。『愛してるよ』って。誰も聞いてないんでしょう?」


こんなおねだりをする自分がらしくなくて恥ずかしいのに、私は開き直ってそう畳みかけていた。
ほんのわずかな間の後、ふっと小さな吐息が耳をくすぐった。


『そんなことでよければ、いくらでも。七瀬、愛してる』

「っ……」


意識的に低くゆっくりと告げてくれた奏介が、今どんなに優しい笑みを浮かべているか想像できてしまう。
私はきゅんと胸を疼かせ、声を喉に詰まらせた。


言わせておいて返事もできずに黙り込む私に、『七瀬?』と奏介が呼びかけてくる。


「……もっと恥ずかしいこと、言わせればよかった」

『え?』

「奏介が言った通り、新婚らしい生活、なかなか始められない。ちょっと困らせたかったのに、そんな簡単に言えちゃうなんて」

『……はは。また『弁護士は口が上手い』って言いたいのか?』
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