外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
照れ隠しで拗ねたことを呟く私に、奏介がクスッと笑いながら問いかけてきた。


『七瀬。俺が、君が照れるようなことも臆すことなく言えるのは、口にする言葉のすべてが、嘘偽りのない本心だからだ』

「っ……」


宥めるような低い声に激しく心を揺さぶられた。
私の胸はドキドキと拍動を始めて、身体が熱を帯び始める。


『嘘じゃないから、いくらでも言える。愛してる。七瀬。……でも、電話越しにしか言えない日が続くと、歯がゆいな』


言葉に詰まった私がなにも言えずにいるからか、奏介も最後はちょっと照れくさそうに呟いた。


『昨夜、あまりにも幸せだったから、君と過ごせない今夜は、ちょっと堪える。……なあ、七瀬。君も俺に声を聞かせてくれないか。今夜は、照れずに』


嬉しいのに、寂しくて切なくて。
奏介への愛おしさが、狂おしいほど胸に込み上げ、溢れ返っていて苦しい。


「そ、……すけ」


私は声を喉に引っかからせながら、必死に彼を呼んだ。
聞き取り辛かったと思うのに、『ん』と短い返事をしてくれる。


「私も、愛してる。大好き、奏介」


大きく鼻を啜ってから、必死に声に出して想いを綴った。


「……帰ってきたら、ぎゅっと抱きしめて」


甘えたお願いは掠れたけれど、奏介は『必ず』と静かに約束してくれた。
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