外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
「大丈夫。居眠りしてただろ、なんて疑ってないから」


クスクス笑われて、私は恥ずかしさを誤魔化そうと、「いただきます!」と挨拶してから茶器に口をつけた。
ゆっくり傾けると、まるでカプチーノのような泡が唇に触れる。
そのまま、わずかにトロミを感じる抹茶を一口含み……。


「どう?」

「苦っ……」


感想を求められるのと同時に、無意識で声をあげてしまった。
次の瞬間、自分に焦ってまっすぐ藤悟さんに目を向ける。
彼はきょとんとして、大きく目を丸くしていたけれど。


「ぶぶぶっ」


さっきより豪快に吹き出し、お腹に手を当ててまで笑い出した。


「も、申し訳ありません!」


和風カフェなんかとは違う、本格的な茶道の教室で点てたお抹茶を飲んだことがないからって、感想を聞かれた第一声が「苦っ」だなんて。
点ててくれた藤悟さんに失礼だし、なにより、茶道家元の次男の嫁としてどうなの!


激しい羞恥のあまり、顔が火を噴くように一気に熱くなる。
そしてすぐに、血の気がサーッと足元に落ちていくという、変な乱降下を味わった。


「いやいや。まあ、初めはだいたいそんなもんだよ」


藤悟さんは、奏介とよく似た切れ長の目尻に薄く涙を滲ませ、ヒラヒラと手を翳しながらフォローしてくれる。
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