クールな社長の裏の顔
 そのあとの仕事は、捗らなかった。


 今日はなんていう日だろう。



 いきなり男の人に告白されたと思ったら社長に助けられ、あげく飲みに行こうと誘われるなんて―。



(わけがわかんないっ)



 彩矢は思わず頭を抱える。




「杉山さん、大丈夫?」



 不思議そうな顔をしながら声をかけてきた周弥に、彩矢は慌てて姿勢を正す。


「あ、すみません。大丈夫です」



「そう? なんか昼戻ってきてから様子変だから」


「そんなことないですよ。あ、コ、コーヒー入れましょうか? あ、みなさんも飲みます?」


「え、でも、ついさっき淹れてもらったばかりだけど」


 隣の席の社員、本山栄二がコーヒーカップを指さした。



「あ、そうでした。すみません」


「本当に大丈夫?」


 さらに心配そうな顔をする周弥は、なぜかちらりと社長のほうをみた。


「だいたいの察しはつくけど、まあ、リラックスして」


 意味ありげに言って、周弥はそのままデスクに戻っていった。


 ふと社長をみると、表情は全く変えずにパソコンに向き合っている。


(意識してるのは、私だけなのかな)



 彩矢はなんとか意識を逸らそうと、気合いを入れなおして仕事に取り組んだ。
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