扉の向こうはいつも雨
 桃香の言葉を聞いた宗一郎は目を伏せて体を離した。
 手は口元を覆い、青い顔を横に振った。

「……ダメだ。やっぱりダメだ。
 僕に近づかないでくれ。」

 荒い呼吸の宗一郎は桃香を乱暴に押し退けてよろめく足取りでリビングを出ていく。
 追いかけて、つかみかけた腕を振り払われた。

 尚も追いかけようとする桃香に部屋の前で立ち止まった。

「来るな。」

 冷たく言い放ち宗一郎だけを入れた扉はすぐに閉められた。
 扉と同じように宗一郎の心も固く閉ざされた気がした。





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