扉の向こうはいつも雨
「僕はさ。
 オッドアイの自分がどんな奴か調べたことがある。」

 それは桃香も同じだった。
 調べて、それで食べられなくて済む何かがあればってそればかりを思っていた。

「色素異常で生まれるオッドアイに人間を喰うなんて記述はどこにもなくて。」

 片手で顔を覆った宗一郎の表情は読み取れない。
 しかしその声は途中から掠れて涙で濡れていく。

 それでも宗一郎は話すのをやめなかった。

「僕のことを綺麗だって言ってくれた桃ちゃんを食べてまで強くなんてなりたくない。」

 宗一郎が弱音を吐く姿を見たのは初めてだった。
 桃香は自分の方が怖くて自分の方が不幸で自分の方が可哀想だとばかり思っていた。

 宗一郎も同じだけ……もしかしたら桃香以上に辛い日々を過ごしていたかもしれない。

 塚田が言いたかったのはこのことだったのかとやっと腑に落ちた。

「オッドアイとして生まれたことを呪ったよ。」

 その気持ちが宗一郎に禍々しさを纏わせていたのかもしれない。
 宗一郎もまた逃れられない宿命に翻弄された1人。

 いつの日も扉を挟んだ2人。
 扉のこちら側と向こう側。
 今は扉を横に置いてこちら側と向こう側。

 儀式の時は扉が閉まることに安堵していた。
 今は扉を隔てていることがとてもつらい。








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