扉の向こうはいつも雨
 古い書物の独特なにおいをさせた巻物は開かれたことが無いのではないかと思わせるほどにきつく紐で結ばれていた。

「テーブルの上では開ききらないと思うから畳の上で広げよう。」

 促されて宗一郎との間に巻物を広げられるようにスペースを空けて座り直した。
 そこへ巻物は置かれ、慎重に開かれていった。

「………家系図というのを初めて見ます。
 壮大ですね。」

 一番最初に出て来たのは宗一郎の名前だ。
 その上には両親の名前、そのまた上……どこまででも遡っていけそうな巻物に息を飲んだ。

 宗一郎の上に順に書かれている人々。
 誰か一人でも欠ければ宗一郎は存在しない。

 分かり切った当たり前のことなのに軽くめまいがした。

 宗一郎は黙々と家系図を遡って広げていき、あるところで動きを止めた。

「あった。」

 指差した所は『辻本太郎』
 横には二重線で繋がれた『樋口きぬ』だった。

「えっ。この人のどこでオッドアイって……。」

 何故だか今にも泣いてしまいそうな表情の宗一郎にハッと息を飲んだ。
 震える睫毛がとても美しくて不謹慎にも見惚れてしまいそうだった。

 宗一郎は静かな声で言った。

「……オッドアイが誕生しない世代の結婚は何も樋口家に拘らなくていい。」

 言われてみれば名字が樋口と書かれた人は宗一郎から順に遡って『樋口きぬ』が初めてだ。

 そして震える手でなぞられた先には
『没明治26年16歳』

 指し示されていた手は固く閉ざされた。
 宗一郎は血の気が引いたように青ざめていく。

「完全なる悪魔の血筋………。」

 そこからどうやって帰ったのか覚えていない。
「樋口の方は見なくていいんですか?」の問いにただ「いいんだ」と言うだけだった。

 そして宗一郎は部屋に籠ってしまった。







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