きみが赤を手離すとき。
「先輩って、彼女のことなんて呼んでます?」
そんな質問をする頃には私はメロンパンを、先輩は彼女からのお弁当を完食していた。
「普通に下の名前」
「私の下の名前知ってます?」
「実由だろ」
そう実由なのです。先輩の彼女の美羽さんと同じ。
こんな偶然あるんだろうかって感じだけど、珍しい名前でもないし、被ったことは別にいい。
でも、私は一度も呼ばれたことのない名前を、先輩は同じ発音で彼女のことを呼んでるんだなって思うと、少し神様が意地悪に感じる。
だって、私の実由は実り豊かな人生が送れるようにって意味と、由はご先祖さまからもらった一文字をつけただけ。
同じ〝みゆ〟でも美しい羽の天使みたいな名前には負ける。
しかも名前だけじゃなくて容姿もお人形みたいに可愛くて美羽さんは守ってあげたくなるような小柄。
一方私は、女子の平均よりも高い身長に、うちの家系は太りやすいらしいから、すぐに肉付きがよくなるし、美羽さんのような華奢で折れそうな骨格ともかけ離れている。
つまり遺伝子からして勝ち目のない私は、先輩の好みと真逆なところにいるのだ。