きみが赤を手離すとき。
先輩のことを意識しはじめたキッカケは忘れてしまった。でも人気がある先輩ということはすでに知っていたし、放たれるオーラからして他の男子とは違った。
私も他の女子同様に顔がカッコいいから気になったのかもしれないし、せめて友達になれたらと、大勢に混ざって連絡先もゲットしに行った。
それぐらい、ミーハーだった。
でもわずか一年で、先輩とお昼ご飯を食べられるぐらい昇格してしまうなんて自分でも思ってなかったけど。
「先輩って、後輩と連絡とったりしてます?」
「んー、広瀬ぐらいしかいないかな。俺普段からあんまりスマホ触んないし」
そう言われると、ちょっと顔がゆるむ。
でも先輩が私と仲良くしてくれるのは、女の子らしさとはかけ離れた私のガサツさに先輩が気づいたからであって、友達のひとりであることは変わらない。
彼女のお弁当のトマトに困っていた先輩に『じゃあ、食べてあげますよ』と言い出したのは私だし、それを口実に先輩との昼休みを過ごしてるなんて、けっこう、だいぶ、ズルいということは痛いほど分かっている。
そんなことを思っていると、東塔へと続く渡り廊下を美羽さんが友達と歩いている姿が見えて、チクリと罪悪感。
でも、許してほしい。
だって選びたい放題のルックスで、彼氏が先輩だなんて、その幸せを昼休みの一時(ひととき)ぐらい分けてくれてもいいじゃないか。