冷たい蜂蜜
見当たらない
電車に乗り、揺られながら景色を見る。


早めの目覚ましでお出かけをしたいと思った。



路地を巡りたい

次の角を曲がればなにが見つかるか



などと呑気なこと考えていた



なんだか眠くなった




このままどこまででも行けるような気がした




切ない気持ちになる




駅に到着し、タクシーに乗る。



ばあちゃんの入院している病院に向かった



何号室か聞いていた為どこの病室かわかった。



ばあちゃんは隔離病棟に入れられている



理由は知っている



熱中症で脱水症状を起こし、倒れて何日か入院し、
退院する頃に病院で暴れたそうだ。



隔離病棟に入れられていたが脱走し、


ホテルに何泊か止まったんだとか。


そして病院に戻り、また隔離病棟に入れられた。


ということだ


ばあちゃんは認知症になっていると聞いた


突然暴れたり、態度をコロコロ変えたりと、認知症の症状ぴったりだそうだ。



病室に入るとばあちゃんはびっくりした様子で私はベッドに近寄り、ばあちゃんは私を抱き寄せる。


歩けないようだった。



何十年ぶりに会ったのだろう。


ばあちゃんは私を抱きしめながら泣いていた。



佐賀には身内などいないのだ



そんなばあちゃんを思うと私も涙が出てきた。



すっごく嬉しかった。



ばあちゃんは泣きながら話をする



私はその話を聞きながら涙を流す。



ばあちゃんは昔からお洒落に気遣っており、肌の管理や美を徹底していた。




私はその光景を見ながらばあちゃんの真似をしていたのを覚えている。




ばあちゃんから貰ったブランド物の鞄を今でも使っている事を話す。


ばあちゃんは嬉しかったのか笑いながら


「あんた、約束覚えとるけ?」


「うん、覚えてるよ、お洒落したくなったらすぐに使いなさいっていう約束だよね?」


「あんた!よく覚えとるね~」


その日は面会時間を過ぎるまでずっと話した。



ばあちゃんにお土産でずっと渡したかった物を渡した。




私がデザインした世界で一つだけのベスト


ばあちゃんが昔から使っていた美容に関する物


そしてばあちゃんの好きだったお菓子



お菓子は全部ナースステーションに預け

次の日も来る約束を交わした






ホテルに戻り、明日も早めに行けるように目覚ましをかけた。








目覚ましがなる前に起きた。



少しだけお洒落をしてみた



靴は2足一応持ってきた


ハイヒールとシンプルなスニーカー


今履いているのは赤のスニーカー



今着ている服はハイヒールが似合う気がした



白色のブラウスに、黒色のベスト。



耳には金色の三日月のイヤリング



ハイヒールの色は黒



これで行こう




ちょっと時間を潰す為にカフェに入った



ご飯を食べて、お会計をした。



近くに石畳の遊歩道を発見した。



昔から異世界のような遊歩道が好きで、


誘われるかのように歩いた。






コツコツ音立てて石畳の遊歩道を歩く




近くに小さな公園がありベンチに座る


今の時刻は朝の8時半


人がいない公園は久しぶりだった





駿人のことを思い出した。


遅くまで駿人と公園で遊んだりしたこと。



懐かしく思った。




気付けば30分ほどずっとベンチに座っていた




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