お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
彼は信号が青に変わっても足を止めたまま、爽やかな笑顔で話し続ける。


「俺も社外に彼女がいたから、これまで特にアクションを起こさなかった。でも半月ほど前に別れてね、今は彼女募集中。織部さんのことは、今も変わらず可愛いと思ってる」


可愛いと面と向かって二度も褒められては照れくさいけど、喜ぶよりは『半分本気』と言われたことに納得する気持ちの方が強かった。

私に恋愛感情を持てそうだから、試しに付き合ってみたいという程度の思いが、彼にはあるみたい。

中途半端な気持ちを正直に打ち明けてくれた彼には、好感が持てる。

もし『ずっと前から好きだった』と嘘をつかれていたなら、これまでそんな素振りはなかったよね?と疑問ばかりで、不審に思ったことだろう。


「俺のこと、どう思う? もしかして今、彼氏いるの? それなら諦めるけど」


たまチョコの空き箱並みに軽い告白でも、久しぶりの恋愛事なので私の鼓動は二割り増しで高鳴っているし、真面目に悩む。

「彼氏はいないんですけど……」と言って目を逸らせば、私たちと同じようにどこかで飲んできたと思われる見知らぬ集団が、大きな声で会話しながら横断歩道を渡っていた。
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