お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
冷静さを装って、彼の企みを追及するような眼差しを隣に向ける。

すると美味しそうにお茶を啜る彼に、鼻で笑われた。


「いつまで強がっていられるかな」


まるで私が、芽生えた恋愛感情と戦っているようなことを言う彼は、飲み干した湯飲み茶碗を朱塗りの茶托に戻し、握っていた私の手を放した。

機嫌のよさそうな声で「ご馳走様」と言って立ち上がると、出社の支度をするべく、リビングのドアを開けて廊下へと出ていく。

その後ろ姿を見送りながら、私は悔しさに唇を噛んだ。


今朝は私の負けかもしれない。

不覚にもドキドキしてしまったし、彰人をデレさせることもできなかった。

こんなふうにやり込められるなら、『大好き』だなんて言うんじゃなかった……。

後悔する私は席を立ち、メイクをしに自分の部屋へと引き揚げた。


ここは社屋の十階にある製品開発部で、時刻は十二時になるところ。

営業部の三分の一ほどしかない室内には、四十人ほどが働いている。

そのうち、私の所属する“たまごんチョコレート開発班”は、たったの八人。
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