お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
そうか、これはアレだ……と私は気づく。

私を惚れさせようと企む彼は、ドキドキさせて気持ちを乱そうと攻撃をしているのだ。


最近の彰人は、やたらとスキンシップを取ろうとしてくる。

それぞれの寝室に入る前の廊下で『おやすみ』と言って頭を撫でたり、カウチソファに並んでテレビを見ている時に急に肩を抱き寄せてきたり。

成田さんに騙されかけた私を助けてくれたあの夜、部署異動させてやると地下駐車場で言われて、私は喜びが突き抜けた。

『大好き!』と叫び、飛びついてしまったことで、この程度のスキンシップなら私は嫌がらないはずだと、彼の中で決めつけた節が窺える。


彰人に触られて嫌だと思ったことはないけど……困る。


私だって年頃の女だから、見た目のいい男性にこんなふうに攻められては、どうしたって鼓動は高鳴る。

けれども、恋愛感情を持ってはならない。

惚れてしまえば彼の思うツボで、期限がくれば私が振られて同居生活は終わり、惨めな敗者となるからだ。


「ずるい……。故意にやってるでしょ? その手にはのらないよ」
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