お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
東条さんが、この対決の勝者になるのかな……。

まだなんの食材ものせられていないトレーを手に、私は小さなため息をつき、恨みがましい視線を彰人に向けた。


どうすればいいのよ。

なにを作れば勝てるのか、さっぱりわからないんですけど……。


審査員席の彼は、隣に座る呉服屋の奥さんと談笑し、呑気にお茶を啜っている。

私がじっと睨むように見ていたら、視線が合い、彼は口の端を微かにつり上げた。


困っている私を見て喜ぶなんて……と非難の思いが込み上げたが、その腹黒い笑みの意味は、どうやら違うようである。

彼は私に口パクでなにかを伝えようとしていた。

その唇の動きを注視すれば、『下手くそ』と言っているような気がした。


そこで私はハッとする。

私の料理の腕を馬鹿にしたのではなく、彼は作るべき料理を教えてくれていた。

朝っぱらから何度も作り直しをさせられ、『下手くそ』と罵られたあの料理、だし巻き卵である。

彰人の特訓のおかげで、だし巻き卵だけは美味しく作れるようになり、彼のレシピはまだ頭にしっかりと刻まれていた。

< 207 / 255 >

この作品をシェア

pagetop