お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
「どこを見てる。股間じゃなく、沽券だ。専務としての信用に関わるという意味だ」


あ、沽券ね……。

変な間違い方をしてしまい、私の頬は熱くなる。

けれども言葉を知らないのかという目で見られたら心外で、恥ずかしがるのではなく、言い訳を探して口にした。


「滅多に使わない言葉だから、聞き間違えただけだよ」


すると偉そうな態度で腕組みした彼に、鼻で笑われる。


「エロいことばかり考えてるせいじゃないのか? これだからオタクはーー」

「はあ? エロくないし、オタクでもない。真っ当な、たまチョコフィギュア収集家だよ。専務のくせに、自社製品にケチつける気?」

「こいつは……減らず口ばかり叩きやがって」


非難の目を向ける彼は、「可愛くないな」と今日二度目の文句を口にした。

それに対し、腰に手を当て、フンと顔を背けた私は、「彰人に可愛いと思われなくて結構」とムキになって言い返す。


「そっちこそ、もう少し丁重に、ひとりの女性として私を扱えないものかな。この調子だと、二カ月で惚れるとか無理だから。つまり、彰人の負けだね」

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