お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
西尾さんが退室したら、彰人は私を拘束する足を外した。

キャスター付きの椅子に座ったまま後ろに下がり、私が出るためのスペースを作ってくれる。


机の下から這い出た私は彼の隣に立ち、窮屈な姿勢からやっと解放されたと「うーん」と伸び上がる。

すると、しかめ面の彼に「危うく笑いそうになっただろ」と、くすぐったことに対しての文句を言われた。


そっちこそ、私に股間を見せつけて。

危うく、おかしな気分になるところだったじゃない……。

その反論は恥ずかしいので口に出せず、笑って流すことにする。


「ちょっとした、いたずら心じゃない。気にしないでよ。それじゃ私は戻るから、彰人もーー」


『彰人も仕事を頑張って』と言おうとして、社内では専務と呼べと注意されたばかりだったことを思いだした。

それで職場用の作り笑顔を彼に向け、「専務もどうぞ業務にお戻りください」と言い直す。

彼に背を向け、執務机を回り、ドアの方へと歩き出せば、後ろに「なんか変だな……」という呟きが聞こえた。

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