無敵の剣
作業が終わるとお婆さんが言った



「一は、もう少し力を抜いて生きなはれ
何でもひとりでは、出来まへん
持ちつ持たれつやわ」


「……」


「雪から、うちらのこと頼まれたんやろ?
年寄りで目も悪い
でも、うちらはこれからも助け合ってく
一が心配することやないよ
たまに帰って来てくれたらええよ」


「お婆さん…」


「今朝、素振りの音を聞いてわかったわ
迷ってはるなぁって
行っといで!何でもやりなはれ!
若いんや!失敗も大事な経験や!
まぁ、失敗せんように精一杯やり!
そんで、やりきったら帰っておいで!」


「浪士組に誘われているんです」


「浪士組?て…」


お婆さんは、ゼンさんから噂を聞いていた


「アホ言いな!!!
あんた!人斬りになるんかいな!!!」


「行けばそうなるでしょうね
行かなければ…
一生、迷い続けるかもしれません」


「辛いことを選ぶんやな…」


「そうですね」





お婆さんは、反対の言葉を口にしなかった




そればかりか





「善を連れて行ったらええ」


「え?」


「一が、無理矢理に誘われてないか
ええ人らかどうか
善に見てこさせる!
うちの目が見えたらなぁ~」


見えなくとも、十分だろう



「とりあえず、遊びに誘われているから
行ってみる ゼンさんが帰ったら
見極めて貰うよ」







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