無敵の剣
出陣前に広間で、もう一度作戦の確認が
行われた


よいしょ、よいしょ と、部屋に
握り飯を大量に運んできた
女中と深雪


私は、深雪を見て苦笑いをした



もう、嫌な予感しかしない…






「腹ごしらえをして下さい!!!」



「ちょっと待て!」




珍しく大きめの声で言葉を発した私を
皆がキョトンと見る



「茶を持ってこい」


「ああ!忘れておりました!」



女達が部屋を出た後

私が握り飯をジロジロ見る



「何してんだ?
毒が入っているわけじゃねぇーだろ?」


永倉さんが、不思議がる



「食べたらわかる」



私の警戒していた事が


「うっ!!しょっぺぇ!!!茶っ!!」


「うわっ!茶をくれ-!!!」



当たった…



「はははっ やっぱり…」


「斎藤君!!!どういうこと!?」


「深雪は、不器用だからっクスクスッ」


「……すみません」



しょんぼりしている深雪から
私も握り飯を受け取る




柔っ!

お粥を握ったのか?


「ぷくくっ ありがとう」


塩っぱくて、べちょべちょの握り飯は
出陣前の緊張を和らげた



「無理して食べなくても…」


「ごちそうさま」


「斎藤さん!今度、美味しいおにぎりの作り方、教えて下さい!!」


「やだ」


「……」


深雪が表情を曇らせた



「深雪は、不器用だから
料理しない方が良いよ ぷふっ」



私に釣られて、皆も笑う



日頃、ガタガタに縫われた着物を
手直しして欲しいと私のところへくる者が
どれくらいいるか


深雪は、知らないだろ?



< 95 / 361 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop