イジワル上司にまるごと愛されてます
「ああ、どういたしまして。たまにはこうやって役職者だけで飲むのもいいな。また誘うぞ」

 恋愛話にならなければいいんだけど、と来海は内心思ったが、敦子は意気込んで「ぜひ!」などと答えている。

「それじゃ、帰ろうか」

 部長が駅に向かって歩き出した。来海も続こうとしたとき、後ろの方で敦子が気だるげに息を吐くのが聞こえた。

「私、飲み過ぎちゃったみたい。雪谷課長、方向が同じだから、一緒にタクシーで帰りましょ」

 来海が肩越しに見ると、敦子は柊哉のスーツの腕につかまってもたれかかった。敦子に体重をかけられ、柊哉は両手で彼女を支える。

「大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃないかも。雪谷課長、家まで送ってくれる?」

 敦子は甘えた声を出して柊哉を上目遣いで見た。

「それならみんなでタクシーに乗りましょう。七瀬さんも」

 柊哉に声をかけられ、来海が心配して敦子を支えようとすると、敦子が鋭い目で来海を見た。その牽制するような眼差しに、来海はトイレでの敦子との会話を思い出す。
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