イジワル上司にまるごと愛されてます
「来海は?」

 柊哉に声をかけられ、来海は「えっ」と声を出した。

「来海はワークライフプラン通りに進んでる?」
「えー……私のワークライフプランでは昇進は三十歳の予定なんだよね……。二十九歳で結婚して、それから昇進する計画……だった」
「そうだったな。それから出産するって研修のグループ発表で言ってたっけ」
「うん、バリバリ働くお母さんってかっこいいなって思って。そういえば、柊哉のワークライフプランに結婚って入ってなかった……よね?」

 そしてそのことをグループ発表で指摘されたとき、彼は『仕事を優先したい。仕事を安定させないと、家庭も安定させられないと思うから』と答えていた。二人が歩もうとしている道のりが、大きく離れていることを思い知らされる。

「私たちって……ずいぶん違うワークライフプランを立てたんだね」
「そうだな」

 柊哉がグラスに口をつけ、二人の間に沈黙が落ちる。それが居心地悪くて、来海は声を発する。

「で、でも、柊哉はすごいよ! 確か計画では、二十五歳で海外に赴任って書いてなかったっけ?」
「うん、そう。あのころはシンガポール支社に三年くらいのつもりだったんだけど」
< 28 / 175 >

この作品をシェア

pagetop