イジワル上司にまるごと愛されてます
 柊哉は困ったような笑みを浮かべた。

(イマイチ踏み切れない、のかな……?)

 来海は生き生きと仕事をする普段の柊哉の姿を頭に思い浮かべた。

 彼は主にヨーロッパを担当していた。スウェーデンのあるベビー用品メーカーの最新式スウィングベッドは、そのデザインだけでなく機能でも世界的に高く評価され、入手が困難になった。それを柊哉はそれまでの取引で築いた現地の人脈を利用し、スムーズにコミュニケーションを取ることで、相当数を確保したのだ。そして輸入したそれらは、あっという間に完売した。

 そのときのとても誇らしげだった柊哉の表情は、この上なく輝いていてかっこよくて……大好きだった。

(応援、してあげなくちゃ)

 来海は大きく息を吸い込んで、努めて明るい声を出す。

「おめでとう! 夢への第一歩だねっ」

 柊哉は来海を見て瞬きをした。

「仕事に打ち込んで生き生きしている柊哉は、すごいなっていつも思ってたんだ。私たちの自慢の同期だよ! 私も日本でがんばるわ。柊哉みたいにワークライフプラン通りに昇進できるかどうかは、わからないけど」
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