イジワル上司にまるごと愛されてます
(私もがんばって、できるだけ自然に“友達”らしく振る舞おう)

 個室を出て手を洗い、女子トイレのドアを開けた。すると、すぐ前の通路に、柊哉が腕を組んで壁にもたれて立っていた。来海を見て、彼はさっと背中を起こす。

「気分が悪いのか?」
「え?」
「カクテル、二杯も飲んでただろ? なかなかトイレから帰ってこないから、気分が悪くなったんじゃないかと思ったんだ。大丈夫なのか?」
「まさか……心配してくれてたの?」
「当たり前だ」

 柊哉の言葉に、胸がツキンと痛んだ。

 四年前の出来事を鮮明に思い出したばかりなので、友達としての優しささえ、胸が苦しくなる。

「どれだけトイレに入ってようが私の勝手でしょ」

 ついそっけない言葉を発してしまったが、柊哉は一瞬目を見開き、すぐにニッと笑った。

「四年前に戻ったみたいだ」
「は?」
「タメ口の方がやっぱりいい」

 柊哉の嬉しそうな笑みが、気持ちを伝える前の、ただの友達だった頃の彼の笑顔と重なる。

 同じように友達の笑顔を返そうと思うけれど、今この瞬間はまだ無理だ。

 来海はふらつく体をまっすぐに伸ばした。
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