イジワル上司にまるごと愛されてます
(スタイってどんなのがあるんだろう……)

 来海はスマホでインターネットブラウザを立ち上げ、大手ベビー用品ストアのネットショップのサイトを開いた。いかにも女の子らしいレースやリボンのついたかわいらしいものから、カウボーイのスカーフのようなカッコイイものまで、多種多様だ。

(男の子なんだよね……)

 来海は大きく息を吐き出した。ワークライフプランで立てた三十歳までに結婚、という目標は叶いそうにないが、それほど焦りは覚えていない。けれど、一歳年上の従姉が一児の母になり、同い年の茉那も母になる。

(好きな人と自分の子どもだもんね。絶対にかわいいだろうなぁ)

 そう思ったとき、柊哉の顔が思い浮かんで、慌てて首を振る。

(いや、それだけは絶対にないから!)

『女とは思えない』
『忘れてくれ。俺も忘れる』

 四年前、彼に言われた言葉が耳に蘇る。

(柊哉はもうすっかり忘れてるんだろうな。だから、あんなふうに平気で私の手を掴んだり、からかったりできるんだ。あんなことされたら、私はぜんぜん平気じゃないのに)
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