蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~
置き去りにされた私たちは、思わず顔を見合わせてしまう。
「彼女にずっと付きまとわれていたんですか? 大変でしたね」
心なしか表情に疲労感を漂わせている佳一郎さんへと笑いかけたけれど、彼は表情の温度をあげぬまま、むしろ苦しげに私をじっと見つめ続けた。
「佳一郎さん?」
「花澄さん、俺は取締役になど興味ありません。魅力的だとも言ってませんから」
「分かってます。佳一郎さんの気持ちは前に聞いてますから」
「ありがとうございます……本当に……本当にすみませんでした」
彼が私に深く頭を下げてきた。
「えっ……そんな。私は大丈夫ですから……佳一郎さん、頭をあげてください」
心の底からの謝罪に驚きながら何度も気にしないでと繰り返したけれど、佳一郎さんはなかなか頭をあげてくれなかった。
+ + +
倉渕物産への帰り道、佳一郎さんはずっと黙っていた。
よそよそしさを感じるまま彼と別れてしまったので、その日の午後は、苦しさを抱えながらの仕事となってしまった。
佳一郎さんが喋らなくなったのは、中佐都さんとのやり取りの中になにか切っ掛けがあったことは明らかで、私は彼女との会話を何度も思い返しては、ため息を吐いた。