蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~
お仕置きしますよという声がどこからか聞こえたような気がして、思わず身体が震えてしまう。
「今ので目が覚めました」
「そうですか。さ、社に戻りますよ」
「……はい」
返事をしたけれど、中條さんとふたりっきりになってしまったことがちょっぴり気恥ずかしくて、ついつい私は今出てきたばかりのお店を振り返り見てしまう。
兄はまだ店の中にいる。「コーヒーをあと一杯飲んで戻るからお前たちは先に行け」と言われ、私たちだけ出てきたのだ。
今頃きっと、麻莉さんの働く姿を見つめながらひとり優雅にコーヒーを飲んでいることだろう。
エレベーターへと向かっていた中條さんが振り返り、立ち止まったままの私に向かって「花澄さん?」と疑問符を投げかけてくる。
「まだ食べ足りないのですか?」
「さっきお腹いっぱいって言ったばかりですけど!」
隙あらば小馬鹿にしてくる中條さん相手に少しでも照れてしまった自分が虚しくて、私は気持ちを切り替えるように大股で中條さんへと歩み寄る。
中條さんとあれこれ言い合いながら足早に進んでいたけれど、エレベーターの傍にあるフロア案内を見つめている姿に気付いた瞬間、両足が急停止した。
「水岡先輩」