蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~
エレベーターの前で足を止め、私は唇を引き結ぶ。
エレベーターの到着が心の底から待ち遠しい。水岡先輩が私たちに気がつく前に離れたい。お願いだから、こっちを見ないでくだ……、
「花澄ちゃん?」
願いは叶わなかった。ほんの数秒項垂れたのち、私は自分の肩に乗っている中條さんの手を押しやりながら振り返る。
「水岡先輩、こんにちは……今日も営業の刈谷さんのところに?」
「あぁ。受付に花澄ちゃんがいなかったから、どうしたのかなって思ってたんだけど、昼休憩?」
「はい」と返事をすれば、水岡先輩の視線は私の隣へと移動する。
最初こそ嫌悪感たっぷりの眼差しを中條さんに注いでいたけれど、水岡先輩は思い留まる様に瞳を揺らしてから、大袈裟なくらいの笑顔を浮かべた。
「中條さんでしたっけ? あなたのことを聞きましたよ。花澄ちゃんのお兄さんの秘書だって」
「はい。確かに倉渕副社長の秘書を務めさせていただいております」
「それで少し前に秘書室長にもなられたとか……それは、花澄ちゃんと付き合う前の話ですか? それとも付き合ったあとのことですか?」