蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~

挑戦的な口調で水岡先輩が問いかければ、中條さんの表情が冷たさを増していく。


「なにを仰りたいのですか?」

「いえ。単に疑問に思っただけです。言いたくなければ構いません」


ぴりぴりとしたふたりのやりとりに口を挟む勇気がなく伏し目がちになっていると、水岡先輩から「花澄ちゃん」と明るく呼びかけられた。

顔をあげると同時に、歩み寄ってきた水岡先輩が私の肩にぽんと手を乗せる。


「近いうちにこの前の返事をくれると嬉しいな。良い返事を期待して待ってるからね」


言葉通り、期待が込められた声で囁きかけてくる。

苦笑いを浮かべながらぎこちなく頷き返すと、水岡先輩は「それじゃあ、また」とフロアの奥に向かって歩き出した。

険悪ムードにヒヤリとはしたけれど、特に問題もなく事態が終息したことにホッとする。

何気なくエレベーターを見上げてから、今更ながらボタンを押していなかったことに気付き、私は慌てて手を伸ばす。

しかし指先がボタンに触れるよりも前に、中條さんが私の手を包み込むようにそっと掴んできた。


「……中條さん?」


不意の出来事に鼓動が跳ね、掴まれた手が震えてしまう。


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